「誰もが快適に使えるデザインってなんだろう?」そう考えたことはありませんか?
私たちの周りには、年齢や国籍、障がいの有無にかかわらず、
誰もが「使いやすい」と感じる工夫が溢れています。
それが「ユニバーサルデザイン」です。
この記事では、ユニバーサルデザインの基本的な考え方から、
私たちの生活を豊かにする具体的な事例まで、その魅力と重要性を探っていきましょう。
この考え方を知ることで、日々の暮らしがより豊かになるヒントが見つかるはずです。
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザイン(Universal Design)とは、「すべての人のためのデザイン」を意味します。
1980年代に、自身も車椅子を利用していたアメリカのロナルド・メイス教授によって提唱されました。特別な誰かだけではなく、最初から「みんなが使いやすい」を目指すのがユニバーサルデザインの核心です。

UDCユニバーサルデザイン・コンソーシアム
http://www.universal-design.co.jp/aboutus/idea/
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い
ユニバーサルデザインと混同されやすい言葉に「バリアフリー」があります。
両者は似ていますが、アプローチの仕方に大きな違いがあります。
バリアフリーとは?
バリアフリーは、既存の障壁(バリア)を後から取り除く考え方です。
たとえば、階段しかない建物にスロープを設置する、段差をなくす、点字ブロックを設置するといった改修がこれにあたります。
これは、特定の問題を抱える人たちが直面する障壁をなくすための「事後対応」と言えます。
ユニバーサルデザインとは?
一方、ユニバーサルデザインは、設計の段階から、できるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインする考え方です。
建物であれば、最初から入り口をスロープにする、自動ドアを設置するといった設計が該当します。
これは、障壁そのものが生まれないようにする「事前設計」であり、多様な人々が共生できる社会を目指すためのより包括的なアプローチです。
ユニバーサルデザインの「7つの原則」

ユニバーサルデザインセンター | デザイン学部
https://design.ncsu.edu/research/center-for-universal-design/
1. 公平な利用(Equitable Use)
誰にでも公平に利用できること。
(例:自動で開くドア、多言語対応の券売機)

2. 利用における柔軟性(Flexibility in Use)
様々な能力や好みに対応できること。
(例:右利きでも左利きでも使えるハサミ、ハンドルの高さを調整できるベビーカー)

3. 単純で直感的な利用(Simple and Intuitive Use)
使い方が簡単で、すぐに理解できること。
(例:絵文字やピクトグラムを使った案内表示、色と形で識別しやすいゴミ箱)

4. 分かりやすい情報(Perceptible Information)
必要な情報が、利用者の感覚能力に関わらず伝わること。
(例:音と光で知らせる横断歩道、点字表示付きのエレベーターボタン)

5. 失敗への寛容さ(Tolerance for Error)
うっかりしたミスが大きな危険につながらないこと。
(例:間違った操作をしても安全に停止する家電製品、押し間違いを防ぐ大きなボタン)

6. 少ない身体的な努力(Low Physical Effort)
少ない力で楽に利用できること。
(例:レバー式のドアノブ、軽い力で開閉できる自動販売機の取り出し口)

7. アクセスや利用のための大きさと空間(Size and Space for Approach and Use)
どんな体格や姿勢、移動能力の人でもアクセスし、利用できる十分な大きさと空間があること。
(例:車椅子でも通れる幅の広い改札口、広い通路)

身の回りにあるユニバーサルデザインの具体例
私たちは、意識せずとも多くのユニバーサルデザインに囲まれて生活しています。
ここでは、具体的な事例をいくつかご紹介しましょう。
【家の中】
- シャンプーやリンスのボトル:シャンプーのボトルにはギザギザの「きざみ」があることで、目を閉じていてもリンスと区別できます。
- 大型の照明スイッチ:指先だけでなく、手のひらや肘でも操作できるため、荷物を持っている時や力が弱い人でも簡単に使えます。
- 多機能トイレ:車椅子利用者だけでなく、おむつ交換が必要な赤ちゃん連れや、体調の悪い人も利用しやすい設計になっています。

花王 | シャンプーのきざみに込められた思い
https://www.kao.com/jp/sustainability/me/universal-design/shampoo-notches/
【街の中】
- 自動販売機:高い位置のボタンは大人向け、低い位置のボタンは子どもや車椅子利用者が押しやすいように配置されています。
- 駅の多言語案内:日本語が分からない外国人観光客でも、直感的に行き先が分かるよう、多言語表記や路線カラー、駅ナンバリングが導入されています。
- ノンステップバス:バス停とバスの間の段差がないため、車椅子やベビーカー、お年寄りもスムーズに乗り降りできます。

ユニバーサル自動販売機の特徴|コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
https://www.ccbji.co.jp/business/installation/universal.php
デジタル空間のユニバーサルデザイン:Webアクセシビリティ
ユニバーサルデザインの考え方は、物理的な製品や環境だけでなく、ウェブサイトやアプリケーションといったデジタル空間にも適用されます。これが「Webアクセシビリティ」と呼ばれるものです。
Webアクセシビリティは、障がいを持つ人、高齢者、一時的に状況が困難な人など、誰もが情報にアクセスし、ウェブサービスを支障なく利用できるようにするための配慮を指します。
Webアクセシビリティの具体例
- 代替テキスト(alt属性):画像の内容をテキストで説明することで、視覚障がいのある人がスクリーンリーダーで画像情報を理解できるようにします。
- キーボード操作対応:マウスが使えない人でも、キーボードのTabキーなどでウェブサイト内を移動し、すべての機能を操作できるように設計します。
- コントラスト比の確保:文字と背景の色のコントラストを十分に確保することで、色覚障がいのある人や高齢者でも文字を読みやすくします。
- 動画の字幕・文字起こし:聴覚障がいのある人や、音が出せない環境にいる人でも動画の内容を理解できるように、字幕や文字起こしを提供します。
- 分かりやすいナビゲーション:サイト全体の構造が分かりやすく、目的のページに簡単にたどり着けるようにメニューやリンクを整理します。
これらの配慮によって、デジタル情報格差を解消し、より多くの人がインターネットの恩恵を受けられるようになります。

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック|デジタル庁
https://www.digital.go.jp/resources/introduction-to-web-accessibility-guidebook
代替テキスト(alt属性)についての記事はこちら
まとめ:なぜ今、ユニバーサルデザインが重要なのか
少子高齢化や国際化が進む現代社会において、多様な人々が共存していくために、ユニバーサルデザインの考え方はますます重要になっています。
ユニバーサルデザインは、特別な誰かのためのものではありません。
障がいのある人、高齢者、子ども、外国人、そして一時的に怪我をしている人など、すべての人の「使いやすさ」「暮らしやすさ」を向上させ、より快適で安全な社会を実現する力を持っています。
次に何か新しい製品やサービスに触れるとき、ぜひ「これは誰にとって使いやすいのだろう?」という視点で観察してみてください。
きっと、私たちの未来をより良くするデザインのヒントが見つかるはずです。
この記事の振り返りFAQ
ユニバーサルデザインとは何ですか
ユニバーサルデザイン(Universal Design)とは、「すべての人のためのデザイン」を意味します。
年齢、国籍、障がいの有無などにかかわらず、誰もが使いやすい製品や環境を設計段階から目指す考え方です。
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは何ですか?
バリアフリーは、既存の障壁を後から取り除くアプローチ(例:階段しかない場所にスロープを設置)です。
一方、ユニバーサルデザインは、設計段階から障壁が生まれないようにするアプローチ(例:最初から入り口をスロープにする)であり、より包括的な考え方と言えます。
ユニバーサルデザインの具体例にはどのようなものがありますか?
日常生活の中には多くのユニバーサルデザインがあります。
例えば、シャンプー容器のギザギザ(きざみ)、幅広い改札口、ノンステップバス、自動販売機の低い位置にあるボタン、スマートフォンの文字サイズ変更機能、多言語対応の案内表示、レバー式のドアノブなどです。
ユニバーサルデザインの「7つの原則」とは何ですか?
ロナルド・メイス教授が提唱した、デザインの指針となる7つの項目です。
「公平な利用」「利用における柔軟性」「単純で直感的な利用」「分かりやすい情報」「失敗への寛容さ」「少ない身体的な努力」「アクセスや利用のための大きさと空間」を指します。
なぜユニバーサルデザインは現代社会で重要なのでしょうか?
少子高齢化やグローバル化が進む現代では、多様な人々が共に暮らす社会が求められています。
ユニバーサルデザインは、特定の誰かだけでなく、すべての人にとっての「使いやすさ」や「暮らしやすさ」を向上させ、安全で快適な社会を実現するために非常に重要だからです。
h.koyama
2025.07.08この記事を共有する
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https://kasoudesign.com/knowledge/universal-design/
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